なぜ貧しい国はなくならないのか 正しい開発戦略を考える(大塚啓二郎/日本経済新聞出版社)読了。開発経済学の入門書。学際的な分野なので、あちら立てればこちら立たずと矛盾だらけになってくるので、それをどう組み立てるか、何を切り捨てるか、など非常に興味深い。BOXというコーナーで問題提起をしてあり、各章の末尾にはまとめも書いてあり、まるで学校でのゼミ活用にもどうぞといわんばかりの親切さだ。
「なぜ貧しい国はなくならないのか」
第5章154Pで断言しているが、
"労働集約的発展→資本集約的発展→知識集約的発展
という段階を踏まない限り途上国が発展することは経験的にありえない..."
これは逆に言うと、日本の現状なわけで製造業の資本の切り捨てが次々と行われているのは当然だし、これを止めるのは無駄。先に進ませるべきだし、そうならないと未来はない、ということだ。グラフにもあったが、製造業の雇用吸収力が過去20年間世界的に変化が見られない、というのには少々驚いた。日本だけを見ていたのでは将来を見誤る。
第6章は「途上国がしてはいけないこと」が事実として列挙してある。アフリカの新しい指導者が過去にやった失政を見ているようで読んでいてなんとも痛々しい、と同時に貧困から抜け出せないアフリカは明記していないが、戦後ほとんどの国が独立したアジアと違って独立が遅かったこと、物質的、心理的な依存傾向が続いているせいではないかと思った。
最終章は二酸化炭素排出量などのエネルギーの地球的排出問題を扱っているが、ここは少々突っ込みが足りないと思った。もちろん、国際的な駆け引きでもあるし南北問題でもあるし、ことの進展が牛歩であることは理解できる。多少、適者生存論的な論調が著者のもどかしさを表しているようだ。
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