2015年3月3日火曜日

「アメリカの卑劣な戦争 無人機と特殊作戦部隊の暗躍 上・下 DIRTY WARS」読了。超良書、絶対読むべき本。

アメリカの卑劣な戦争―無人機と特殊作戦部隊の暗躍〈上〉<ジェレミー・スケイヒル/柏書房>
<DIRTY WARS The World is a BAttlefield/Jremy Scahill>


「アメリカの卑劣な戦争 無人機と特殊作戦部隊の暗躍 上 DIRTY WARS」


これは上下巻出ており、今下巻を読んでいる最中なのだが、私の2015年衝撃作のひとつと今のところ言っていい。今ここにDeath Noteがあったら、ディック・チェイニー元副大統領とドナルド・ラムズフェルドは即刻書き入れるべきだろう。

ISIL(イスラム国)の残虐さなどが喧伝されているが、ここまで追い込んだのはアメリカであることがよくわかる。そして、根は旧ソ連によるアフガニスタン侵攻とアメリカによるその阻止からすべては始まっている気がする。阻止のためにアルカーイダを育て、育ったら捨て、とイギリス以上の合理主義性が完全に仇となっている。そのケツ拭きを国際連合の有志国がするだとか、茶番もいいところだ。日本のパシリぶりにへそで茶が沸きそうだ。

戦争ではなく、軍事行動、戦争の一部、「軍事上の準備」だから議会に状況説明する必要はない
P110
軍事作戦ではなく、<戦闘空間の戦略的準備>P301

などなど二枚舌のオンパレードだ。戦争じゃなくアメリカ政府公認の暗殺計画の土台作りをオバマが継承していく経過なども書かれている。そりゃ、戦争より秘密裏に処理したいだろうが、他国をぐちゃぐちゃに荒らしまわって、次の国へ、ホイなど野蛮で傲慢もいいところだ。たまったものじゃない。

いや、酷い。読んでいると、もはや歪んだ宗教戦争に変質させたと言っていいだろう。

ただ、チェイニーやラムズフェルドが重厚長大化した軍を情報戦争に合わせて軽く早くした功績は認めるべきかもしれない。それにしても、軍の決定までの堅牢さ(=遅さ)は今までの軍部の独走や間違いを犯さないために昔から積み上げられてきた叡智の結果でもあるわけで、それらをないがしろにするのはやはり後戻りできないやり方だったと思う。ラムズフェルドらにしてみれば、軍部自らの改革なんてどれだけ待っていてもできやしない、と言うだろう。現に、彼らにしても改革までかなり年月をかけている。たまたま、あの9.11アメリカ同時多発テロ事件があったから飛躍実現することができたのだから。だが、事前に9.11のようなことが起きると予測しておきながら放置していたのはなぜかという疑問は残るが...

アメリカの卑劣な戦争―無人機と特殊作戦部隊の暗躍〈下〉<ジェレミー・スケイヒル/柏書房>
<DIRTY WARS The World is a BAttlefield/Jremy Scahill>

下巻は一気に読了。上巻が凄かったので下巻はあっという間だった。アメリカに軍事協力すると最後はイエメンのようになるという事例でもあった。これが日本に置き換わったらどうなるかと思うと背筋が寒くなる。テロリストに向けてミサイルを撃ち込んで民間人の死者が出たとしてもテロリストを葬った、と発表され行ったのは日本でありアメリカは手伝っただけということになる。そして、民間人の巻き添えがあったのはお気の毒様でした、で終了。

オバマ大統領は暗殺軍団の親玉であることがこれを読んでよく分かる。毎週、キルリストがあがってきたらテロ計画を未然に防ぐためという大義名分の下、テロリスト疑惑の影響力の強い人間を殺すという決定を下しているのだから。しかも、キルリストはCIA、統合特殊作戦コマンドそれぞれから別々に作成され上梓競争をしているというのだから呆れる。"マイノリティ・リポート 特別編 [DVD]"のようなことが現実に行われているわけだ。

攻撃されるかもしれないという恐怖が過剰防衛ではなく過剰攻撃になるところが非常にアメリカ的だと思う。

"もし、最高司令官(大統領)が自分の選んだ候補者でなかったとしたら、同じ政策ー無人機攻撃の拡大や、統合特殊作戦コマンドの権限の強化、国家機密の秘匿特権の行使、捕虜の無期限の拘留、人身保護令状請求権の否認、起訴や裁判に基づかないアメリカ市民の標的殺害ーを支持するだろうか、と。"(P420から引用 オバマ大統領の対テロ政策グループの前顧問でラサール大学の教授マイケル・ボイルによる発言より)

「....しかし、旧来の武力衝突の枠組みのなかで考えてみれば-いうまでもなくー捕縛や拘束、殺傷力の高い武力の行使といったものは、軍隊と同様に古くから存在する、ごく一般的な手法です」(P424引用 国防総省の法律顧問ジェイ・ジョンソンの講演から)

"結局のところ、世界規模の戦争へと拡大しつつあるオバマ政権の国防戦略は、煎じ詰めれば、戦争とは実質そういうものなのだという論理に落ち着く。"(P425文中引用)

アンワル・アウラキとその息子アブドゥルラフマン・アウラキが殺されてしまう章ではやるせない気持ちになった。これでは、延々と復讐が孫子の代まで続くだけではないか、と。テロリストを撲滅するための行為がもはやすべてのイスラム信者を敵に回している、と思う。キリスト教国は本質的にイスラム教国が怖いのだろうか。あの一見、残忍に見える処刑方法も彼らの教義に従っているわけで、日本の絞首刑も残酷な処刑方法だと思われているのだから、残酷、残忍はその国の文化的背景を見る必要がある。

つまり、今世界は戦争状態である、ということだ。戦争を国民に意識させずに戦争を行いたいのでインテリジェンスを総動員して秘密裏に動くわけだ。だから、一番効率的なのが影響力の高い人間=高価値対象者を暗殺することだ、ということになる。なんだ、昔からアメリカがやっていることじゃないかと言えばその通り、少々モダンでスマートになったとCIAは澄まして答えるだろう。


ドキュメンタリー映画Dirty Wars [DVD] [Import]も製作されて、サンダンス映画祭・国内ドキュメンタリー部門撮影賞受賞、アカデミー賞・長編ドキュメンタリー映画部門ノミネートされているらしい。


YouTubeより。完全版もupされている。


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