2015年3月24日火曜日

「アダム・スミスとその時代」脚注不足だったけれど良い本だった

アダム・スミスとその時代<ニコラス・フィリップソン/永井大輔訳/白水社>


「アダム・スミスとその時代」


不満点

ホラント→オランダのことらしい
コレッジ→カレッジのことらしい

いきなりホラントと書かれてもなんだ?と思っちゃうよね。そりゃ英語的には正しいんだろうけれど...馴染みのあるカタカナにするか、予め断って欲しいものだ。

長老派→えーと、何だったっけ、キリスト教の一派?
穏健派→えーと、何だったっけ、キリスト教の一派?アメリカにもあったような...
ウイッグ党→えーと、何だったっけ、キリスト教の一派?
トーリー→えーと、何だったっけ、なんか党じゃなかったっけ。
ジャコバイト→えーと、何だったっけ、ラッダイト運動のことじゃないよね。
高教会派→えーと、何だったっけ、キリスト教の一派?

とまあ、とまどいながら読み進めたのだが...昔、世界史で習ったような語句が出てきたけれど、復習の意味で用語解説して欲しかったな。あるいは表にしてくれば一目瞭然だったのに...

細かい不満はあったけれど、アダム・スミスの思考の伝記としてとても面白かった。ヒュームに影響を受けていたことは知っていたけれど、ヒュームもスミスもその人間学とも言うべき目指した学問の広さと高みには驚いた。スミスの生れ落ちた時期も幸運だった。地元の都市グラスゴーやエディンバラが商業的に勃興する時代であったり、東インド会社の危機、アメリカの植民地問題など新時代の息吹を間近で見聞きできたのは学説の例証にかなり役立ったようだ。また、アダム・スミスと言えば経済学の祖などと呼ばれているが、実際には法学、哲学、倫理学、人類学、社会学、果ては美学など知の巨人と呼ぶべきほどの足跡を残した偉大なる学者であったことがよくわかった。

"フランスとイングランドは、双方とも相手の陸海軍力の増大を恐れる理由をそれなりにもっているかもしれない。しかし両国のいずれにとっても、相手国内の幸福と繁栄に対して、すなわち国土の耕作、製造業の発展、商業の増大、港湾の安全性と総数、すべての人文学および科学の進歩に対して嫉妬するのは、間違いなく、かくも偉大な二国の尊厳にふさわしくないことである。これらはすべて、われわれが生活しているこの世界の、真の改良なのである。それらによって人類は便益を受け、人間本性は品位を高める。各国はそうした改良において自国が卓越するように努力するべきだが、それだけでなく、人類愛に基づいて、近隣諸国が卓越するのを促進するべきであって、妨害するべきではないのである。これらはすべて、国同士の競争対象としてふさわしいのであって、国同士の偏見もしくは嫉妬の対象なのではない。"<P362引用>

日本も近隣諸国もこのような精神でありたいものだ。

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