2013年7月21日日曜日

「2100年の科学ライフ」を読んで未来などを考えてみた

 2100年の科学ライフ <ミチオ・カク/NHK出版>読了。全般的には面白かったがUSA寄りの楽観的な識見だと言える。この中で印象的なところがあったので引用したい。


「2100年の科学ライフ」


"....ロボットの持つ制約は何だろうか?前に見たとおり、人工知能には少なくともふたつ、基本的な障害がある。パターン認識と常識だ。だから未来にも残っている仕事は、主に、ロボットにはできない仕事-このふたつの能力を必要とする仕事-となる。

 ブルーカラーの労働者だと、敗者になるのは反復作業をするだけの人(自動車工場のラインで働く人など)だろう。.......意外かもしれないが、ブルーカラーの仕事にも、この先コンピュータ革命を生き延び、むしろ盛んになるものたがたくさんある。勝者となるのは、パターン認識を必要とする、反復的でない作業をおこなう労働者だ。ゴミ収集員、警察官、建築作業員、庭師、配管工は、将来も仕事があるだろう。ごみ収集員は、さまざまな家や集合住宅のゴミを回収するのに、ゴミ袋を見分けて収集車へ積み込み、処分場へ運ばなければならない。しかもそれでいて、ゴミはひとつひとつ処分方法が違う。建築作業員は、作業ごとに、使う工具や設計図や指示が違う。建設現場には、ふたつとして同じものはない。警察官は、さまざまな状況で起こった多様な犯罪を捜査しなくてはならない。おまけに犯行の動機や手口もつかまなければならず、これはどんなコンピュータにもできない。同じように、庭やシンクタンクもひとつひとつ違うので、庭師や配管工にはさまざまな技能や工具が必要なのだ。
 ホワイトカラーの労働者だと、敗者になるのは、在庫確認や計算に携わる仲介的な仕事をする人だろう。下級公務員、仲介業者、銀行の窓口係、経理担当などは仕事がなくなって、職を追われていく。....

 したがってホワイトカラーの労働者のなかでは、役に立つ見識を提供できる人が勝者になる。つまり、「ヒトをヒトたらしめる」創造的な資質-芸術、演技、ジョーク、ソフトウェアの作成、リーダーシップ、分析、科学など-を備えた労働者である。

 芸術に携わる人には、この先も仕事があるだろう。インターネットは独創的な芸術を貪欲に求めているからだ。コンピュータは、芸術を模倣するのは得意で、芸術家が作品を加工するのには役立っているが、新しいタイプの作品を生み出すのはひどく苦手だ。人を奮い立たせ、魅了し、感情を呼び起こし、ぞくぞくさせる芸術は、コンピュータでは生み出せない。芸術のもつこうした特性はすべて、見識を必要とするからだ。...

 弁護士など、人間関係を扱う人も、この先仕事があるだろう。弁護士ロボットは、法にかんする初歩的な質問に答えられるとしても、法そのものが、社会規範や道徳観の移り変わりに応じて絶えず変わっている。結局のところ、法の解釈は価値判断なわけだが、コンピュータにはそれができない。....

 一見したところ、法は、厳密な言い回しや難解に聞こえる名称や定義があるため、厳格で明確なものに思えるかもしれない。しかしそれは見かけだけで、実際にはそうした定義の解釈もつねに変化している。

 それでもこの傾向は、もうこの先続かないだろう。インターネットは雑音にあふれ、自称預言者が日々聴衆に熱弁を振るい、広大妄想家が突飛な考えを押しつけようとしている。そのため人々は、やがて知恵という新たな商品を大事にするようになる。ランダムな情報は知恵と結びつかないので、将来、人々はいかれたブロガーの暴言に嫌気が差し、知恵という希少な商品を提供する評判の高いサイトを捜し求めることになるだろう。

 では、映画俳優はどうなるだろう?...CG化された人物は立体的で陰影もある。そうなると、俳優は近いうちに用なしになってしまうのだろうか?

...それはあるまい、....."

 以上、"第7章 富の未来 勝者と敗者"より文中引用

 確かに、自動車産業は為替変動で景気が左右されることも多い上に、ハイブリッドや電気自動車などの台頭によりラインによっては統廃合があるし、工場勤務の配置転換もあるので、横で愛知県のトヨタ労働者を見てきた私も同意できる部分はあるが、それも想定内として働き続ける必要があるという意味でとらえたい。すぐにこの職業がダメになるという話ではない。つい最近、アメリカのGM城下町のデトロイト市が破産宣告をしたたらしいが、それはデトロイト市のGMラインがダメになったというだけで、すぐそばにあるGMのピックアップトラックを製造している別のラインを持った市は栄えているのである。

 ゴミ収集員、警察官、建築作業員、庭師、配管工は残ると著者は言っているが、現実のゴミ収集員は実際には公務員が主体ではなく、委託作業を受託している下請けの会社の社員または非正規雇用社員だ。警察官も駐車違反などはすでに駐車監視員を派遣する警備会社などにアウトソーシング済みだ。もちろん、警察関係者の天下り先である。天下り先を増やしたければ交通事故などのトラブルなども保険会社などに委託してもいいと思うのだが...

 そうそう、話は変わるけれど、免許更新時に全国運転免許センターの窓口で数千円の「交通安全協会費」(一般社団法人全日本交通安全協会)を要求されるけれど、あれは任意なので払わなくてもいいのだ。これは昔から伝え聞いて知っていはいたのだが、私自身は一回も試したことがない。なぜか、免許更新センターはいつも凄い人込みなので並んでいると早く駆け込みたくてそんなことを忘れてしまうからだ。けれども、お金に余裕がない人は実践したほうがいいだろう、数千円でも。

 庭師は一つの技術だとは思うが一日の剪定料金などが高く、実際には年々庭に植栽する人が減っているために需要は減っているのだ。松の木などの剪定など一回だけで数万円飛ぶんじゃバブル時期じゃあるまいし、若い人が松の木を有難がる訳がなかろう。庭など借景であればタダだ。実際、庭師も造園会社のサラリーマンでないと難しい時代になった。フリーで稼げるなど昔の話だ。

 弁護士が将来性ありと言うことだが、現実の日本で弁護士の食い扶持のなさを考えると簡単には頷けない話だ。しかも、TPPによる市場開放でアメリカから大挙して弁護士がやってきたらさらに食えなくなるではないか。

 芸術が将来性ありと言うが、まさに児ポを旗頭に公の名の下に規制を進めている最中のこの国で将来性ありなどと呑気に構えられない。日本の芸術は猥雑さも含めてごった煮であるから面白い物が出てくるわけで、クールジャパンのクールはまさに寒々とした日本芸術の将来と言ったほうが正しいだろう。

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