2018年6月19日火曜日

「Χの悲劇」読了。面白かった。

χの悲劇 (講談社ノベルス)<森博嗣>読了。



推理小説いうよりもはや近未来サスペンス小説。作者の小説はキャラクターが立っていて面白い。実に、アルアル感がリアルなのだ。ただ、近未来にしてはそれぞれの細かい時代設定の考証が甘いのでSF小説とは言い難い。むしろ、Gシリーズの外伝のようだ。身体の不完全性に身悶えたり、脳のUploadを暗示していたり、潜んでいるテーマとしては先端的で面白いものを扱っているがハードSFではない。小説としての文学性は低い、思考にストーリーがついているだけ、なのだがそこが実に理工的で興味深くはある。これ、とっつきやすいジュブナイルにしたら売れるのになあ...作者はやはり固いんだよなあ。

一気に読んでしまったのは事実だ。昔、人気のあったキャラクターが再び登場するのは懐かしいし、その後のアナザーストーリーっぽくて昔の読者を再び呼び戻すのではなかろうか。

最初、Xの悲劇のオマージュ作品か、とも思ったのだが、どこらあたりがオマージュなのかわからない。ただ、私が中学生の頃、最初にハマって読んだのは「Xの悲劇」<エラリー・クイーン>だったので、そういう意味では個人的に嬉しいオマージュだ。