2020年6月15日月曜日

「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」読了、後付け本

みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」読了、後付け本。日経コンピュータの上から目線の編集がウザい。後からならいくらでも言えるよな。


「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」

1999年に3行が統合して2000年にみずほホールディングス(みずほフィナンシャルグループ)となったのだが、ちょうどインターネットの商業利用が物凄く活発になってきて、Windows2000が発売された頃だ。いくら、インターネットが盛んになってきたとはいっても、この時点で勘定系システムの未来をどこまで予測できただろうか。画期的なWindows95が世に出たのが1995年、これでインターネットへの世界が急速に広がったが、統合のわずか5年前だ。シンクライアントを1996年オラクルが言い出してから、WindowsNTサーバーやWindows2000にその機能が実装されつつあった時代だ。経営者がこの時点で、勘定系システムの統合を先延ばしするのも無理はない。システムの刷新はとんでもない費用がかかる。どんな先進的な経営者でもビビる金額だ。まして保守的なメガ金融業、著作者の日経コンピュータが偉そうなことを書こうと、その時のプロジェクトマネージャーがちゃんと決まっていない、ということぐらい当たり前の指摘だ。まして、統合したばかりで、人事が順送りである伝統の日本的統合だ。失敗は指摘されなくてもわかった結果だ。

さらに言えば、当時のSierの力点もシステム構築と運用でバックアップが主だった面から、ようやく最初の構想力が注目されようとした時代だ。勘定系システムの新構築で当時、そんなことができるSierが存在しただろうか。SIer自身、当時は統合を繰り返しており、NTTデータは1988年に発足したばかり、日本IBMでさえ1992年にようやくシステム構築の受注を始めたばかりだ。

私見だが、当時アメリカのほうが経済の低迷期から脱してインターネットバブルを産み出すほどだったので、十分な知見を得つつあった日本IBMに全面的に任せるべきだったと思う。当時、私も覚えがあるが、日本SIerたちは、金融業界からの脱落を極度に怯えていて、それはそれはここは絶対に引けない、と関係者は必死の形相だったのを良く覚えている。

NECの同僚が「ウチは住友だけ残ればいいんだよ...」とポツンと寂しそうに言っていたのを思い出す。その彼が、住友銀行はヤクザと同じだ、とボヤいた後に、住友銀行の支店長が本当にヤクザに殺された事件を思い返し、彼の言っていることは”激烈な値引きや強烈なサービス要求に儲かるわけないよ”、という本音に替えた愚痴なんだろうなあ、と改めて感じ入ったのを昨日のことのように覚えている。あと、富士通の必死さが物凄くてソリューションの人たちは大変だなあ、と他社ながら同情した。確かに、こんな大規模なウォーターフォール型案件を逃したら左遷は間違いないよな、ハードウェアとソフトウェアだけじゃない、メインフレーム、サーバ、端末、ATM、それが全国規模で、2次、3次下請けには受注会社の子会社や関連会社も多数いるし、日々のメンテナンス料、絶対に落ちないようにシステムの二重化も考えると半端ない失注になる、と思ったものだ。

結局、2002年の一度目の失敗は時代も時代だし統合すぐだったので仕方がないと思うのだ。だが、2011年の二度目の失敗は許されないと思う。当時、携帯電話の生産台数がPCを追い越したのだから、爆発的な需要が起きるという将来を十分見通せたはずだ。データ処理の上限確認も入念に確認できたはずだ。もちろん、未曾有の有事でリスクを見通せないのは誰もが陥る罠には違いない。東京電力も陥ったし、リスクの備えがいつもギリギリで余裕を持たせないのは日本の組織の悪癖のひとつだろう。みずほは、いつまでも社内調整に力を削がれていたからだろうが、大変残念な結果だった。

はっきり言って、みずほ銀行のユルさと先進性は嫌いじゃない。みずほインターネット支店も真っ先に作ったし大いに利用させてもらったが、そこからデジタル決済への踏み込みなど、どれも連携力と進展が弱いのだ。一発企画で終わっている。全面的な採用までどうしても辿り着かないのだ。三井住友銀行だと無駄を極限まで削ぎ、極端に固定費を落とし増益に変えていく凄みがある。三菱UFJ銀行だとじわじわ真綿を締めていくように統合を絞っていくいやらしさがある。三菱UFJ銀行の為替窓口にしょっちゅう顔を出していた頃、東京銀行出身の彼女らのワークスペースが見るからに狭くどんどん小さくなっていくのを気の毒に見ていたが、そのうち窓口もなくなりスペースさえなくなった。銀行名の東京三菱はいつのまにか三菱東京UFJと逆転して、東京もいつのまにか消えた。きっとUFJもそのうち消えて三菱だけになるんだろうなあ。

ここでBGM。




ただ、メガ銀行はFinTechも怠っているわけではない。投資はしているが個人的にはFinTechの口座を持とうとは思えない。投資資本が旧世代のシステム維持に使われるのは御免だ。いずれにしろ、住友、三菱どちらも銀行員として勤めたくはない。まあ、向いているわけないけれど。

2025年の崖は無事に乗り切って欲しいものだ。みずほ#とかいうFinTech銀行を作って、みずほホールディングスは今実施中のリストラを10倍早めるというのはどうだろう。コロナ禍の今、リアル店舗は今のZ世代が全員大人になった頃に全廃でもいいだろう。